学年より
1年生が浜通りに「遠足」に行ってきました!(探究『SDGs×哲学対話』vol.5)
10月13日(水)、「SDGsの視点からの浜通りでの実地研修」を兼ねた遠足に行ってきました。今年度の1年生の遠足は、コロナ禍の下で不特定多数が密になる観光スポットを避けるという目的と、探究学習「SDGs×哲学対話」に関わる実地研修を行うという方針から、なかなか足を運ぶことのできない浜通りを訪れました。
昨年オープンした『東日本大震災・原子力災害伝承館』を中心に、いわき市・広野町・楢葉町・富岡町・大熊町・双葉町・浪江町・南相馬市・相馬市と北上し、車窓からではありますが『イノベーション・コースト』の整備状況を実感しました。SDGsのゴールで言うと、目標11「都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする」ための【防災】、目標7「すべての人々に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する」とともに、目標13「気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る」ための【環境】、そして、目標9「強靭なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、技術革新の拡大を図る」ための【イノベーション(技術革新)】について学ぶことができたと思います。
常磐双葉ICを降りてからの一般道の両側には、立ち入り禁止の鉄柵が施され、荒れ果ててしまった住宅が佇んでいました。双葉町は、現在も除染・復旧工事関係者以外の一般住民の自由な行き来が終日制限される「帰還困難区域」に指定されており、2021年9月現在、町全域が一日を通して人の住む事が出来ない日本で唯一の自治体です。ちなみに、当日の伝承館周辺の放射線量は0.06μSv/hで、郡山の値は0.04μSv/hでした。
『伝承館』では、災害の始まりから現在の状況までを知るための「展示見学」、災害を実体験した方々の生の声を聞く「語り部講話」、154人の住民の方々が犠牲となった請戸地区を中心とした「フィールドワーク」の3つのプログラムを研修しました。
「フィールドワーク」では、かつて約450世帯が生活を営んでいた請戸地区を車窓から眺めました。当たり前ですが、今は一軒の住宅もなく、ただただ草地が広がっています。請戸川を10m~15mの津波が遡っていったと言われています。その草地の中にポツンとそびえたっているのが、福島県で初めて震災遺構としての保存が決まった請戸小学校です。先生と子どもたちは、2km先にある大平山までの避難を決意し、無事全員が助かりました。今、大平山には、請戸地区周辺で亡くなった方々の慰霊碑が立っています。
また、『伝承館』に隣接する『双葉町産業交流センター』の展望台からは、除染で生じた放射性廃棄物等を数十年にわたって保管することになるであろう『中間貯蔵施設(建設中)』、廃炉作業が進められている『東京電力福島第一原子力発電所』の工事用鉄塔を見ることができました。
『イノベーション・コースト構想』は、浜通り地域の産業を回復するために、「廃炉」「エネルギー・環境」「ロボット」「農林水産業」を中心に、新たな産業基盤の構築を図る国家プロジェクトで、高い技術力を持った企業の産業集積、人材育成や情報発信、交流人口の拡大を目指して、浜通り地域の復旧・復興が進められています。福島県は、「福島県再生可能エネルギー推進ビジョン」を打ち出しており、2040年頃には県内エネルギー需要の100%相当量を再生可能エネルギーで生み出すことを目標にしています。阿武隈・浜通りエリアには国内最大級の風力発電施設、いわき沖には浮体式洋上風力発電の実験施設、また、浪江町には世界最大級の水素製造システムが、そして、県内各地域にメガソーラーによる太陽光発電施設が整備されつつあります。今回も、常磐高速道路の車上から「富岡復興メガソーラー・SAKURA」を見ることができました。
生徒たちの感想には、「地震が起きた当時から止まってしまった時間を実感することができた」「ニュースには報道されないパネルの写真を見て、心が苦しくなるとともに、そのリアルさが伝わってきた」「あんなにも海に近い場所から小学生が逃げることができたのは本当に良かった」「被災した方々の話を聞くことができ、自分のことだけでなく他の地域にも目を向けなければならないと感じた」「私は震災で郡山に避難してきたので、自分の故郷の人たちの頑張りや現状を知ることができてよかった」と綴られていました。
新型コロナ感染防止のためイノベーション施設を見学できなかったことが残念でしたが、是非、今度、青い青い海の広がる太平洋の景色を見ることのできる晴れた日に、研究施設の見学と併せて、個人的に浜通りの町々を訪れてほしいと願っています。
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